萩尾望都の「残酷な神が支配する」が文庫になっているのを見つけて買ってしまった。既に全部読んだけど、一巻を買ったということは最後まで揃えてしまいそうだ。置くとこないぞ。

義理の息子に対する父からの性虐待、被虐待者である少年そして彼をとりまく人々の再生を描いた長編コミック。何よりも彼がその体験を生き残っていく過程を丁寧にえんえんと追った作者の粘り強さがすばらしい。こういうのを「降りて書く」っていうんだと思う。頭で考えたストーリーではなくて、作品の登場人物の成長に作者が合わせて書いているような感じが私にはします。

一時、虐待をテーマにしたフィクションが目だったことがあったが、難しい題材だと思う。「かわいそうな人たち」という作者の視線を感じると私はひいてしまうのだ。虐待を受けた登場人物に対して、作者がどういう位置にたつか、というのはおそらく頭で決められるものではなく、作者も虐待という体験を生きてみないと真に心に迫るものにならないように感じる。

虐待に限らないのだろうが、心身えぐられる体験をした人だからこそ、さずかる愛というのがあるのだろうともこの作品を読んで感じた。この「愛」というのは「みたいなもの」ではなく、まさしく「愛」のことである。軽くは読めない漫画だけど、こういう誠実な重さってすごく好きで、「よし、やるぞ」てな気持ちにもなる。変かしら。

「神が支配する」のは真理でしょう。それがどういう神であるか決めるのは自由だ。

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