クリス・ヴァン・オールズバーグの名作絵本「急行『北極号』」(画像;売れてるみたいですね)の映画化。フルCGだというので、あるいはトム・ハンクス大会だというので、ひるんでいる人はいませんか?この映画が少しでも気になる人は、クリスマス前というベストシーズンの今を逃して観ずにいると後悔しますよ〜。

「パフォーマンス・キャプチャー」という画期的な新技術を生かした映像は、プログラムでアニメーション作家の山村浩二氏が書いておられるように、まさしく「温もりのあるCG」。雪とか布とか床の質感がそれぞれリアルにくっきりと表現されている。私はあまりCG好きではないけれど、この映画のCGアニメーションは、あたたかみを感じさせると同時に、完全に「つくりもの」であるという側面がファンタジーという別世界にふさわしく、安心できる閉じた空間を提供するのにプラスに働いたと思う。

「ハリウッドの人間国宝」トム・ハンクスは5役を演じ(ただし主役の少年の声は吹き替え)、芸達者ぶりを発揮しているともいえるけど、車掌さんと謎の男ホーボーはどう見てもトム・ハンクス…ご愛嬌なり。このCGのタッチは特に動物(あんまり出てこないけど)にぴったりで、じたばたして喜ぶトナカイたちがかわいく私のお気に入りだった。動物じゃないけど、あのスティーブン・タイラーが妖精(!)スターとして出演しているのもお楽しみ。

絵本が原作だし、まったりした話かと思っていたら、さにあらず。ディズニーランドのアトラクションも顔負けのスリルとサスペンス(ああクリシェ…)が楽しめます。大げさでなく画面から目を離すことができなかったよ。それに日頃クリスマス(というかクリスマスにまつわるいろいろ)に食傷しきっている私のような人でもだいじょうぶ。この静かで抑制された世界のクリスマスでは、ちゃんと必要な人のところに必要なものが届けられます。

「ポーラー・エクスプレス」に乗った子どもたちは屈託なくクリスマスを楽しめているわけではなく、どこかに「すーすー」するような穴を抱えている。北極まで旅をして、かれらはかれらの欠損ゆえにそれぞれが贈り物をもらったのではないだろうか。満ち足りている人がより満ちるというよりも、こうゆうふうに欠けた人が満たされるのが本当はクリスマスじゃないのかなー。がらんとした人気のないホールで鳴っているようなクリスマスソングの枯れた使い方もよかった。

メイキングつきでDVDが出るなら買ってしまいそうな予感がかなりする。手抜きなし、いい作品を観れてしゃーわせ。クリスマスまであと一週間。「ポーラー・エクスプレス」、お薦めします。

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