銀座のギャラリー椿で恒松正敏作品集「METAMORPHOSIS」出版記念展を見た。恒松氏はフリクション(というバンド)のギタリストとして活躍し、ミュージシャンとしても知られるお方。

86年以降の35作品が展示されている。屏風絵(といっても高さが30センチくらい?のもの)も数点あって、興味をひかれる。面白い。特に麒麟や龍が描かれたものがよくて、これが床の間に飾られていたらさぞかっこいいだろう、ロックな和室になるだろうなあと思う。

会場には御本人の恒松氏がいらっしゃって、時おりきれいなブルーのギターをつまびいておられた(シブイ。なんとぜいたくな空間であることよ)。画集にサインを頂き、「屏風が素敵ですね」と言ったら「これはこうやって反対側にも曲がるんですよ」と気さくに屏風のデモ(?)をしてみせてくださった。ほおー。

恒松氏の個展は見る度に「いつか原画が欲しいものだよ」と思うものの、予算と、そして作品が置けるような清らかな空間がうちにいつもナイ。というよりこういう絵を置けば、清い空間ができるかも…。

「百物語」のシリーズに描かれた異形の獣は、「泣いた赤鬼」を思わせる。このシリーズはイマジナティブで、以前からとても好きだった。「物語のパーツ」であるかのような、動物、耳、瞳、瞳、何かの幻、何かの記憶はいくらでも物語を語ってくれそうで見ていて飽きない。

これらの絵がもう音が鳴らしているとすると、今の私にはもう少し前、物語が生まれるその瞬間のほんの少し前、あるいはもう少し前が必要だと今日は感じた。混沌としてかたちになっていなくて、どこへもベクトルが見出せない、空気が重くてエネルギーを含んでいる。たとえばヘレン・ケラーが「み、みず…(water)」と言葉を発するほんの少し前。今はそういう物語以前によりひかれる。

そう長くはいなかったけれど、とても豊かな時間でした。自明のことなのかもしれないけど、絵って額縁のなかだけのことではないのだなと気づく。その後に、友人と会って食事。珍しく本格的なコーヒーを淹れる「喫茶店」にも寄ってあれこれ話す。

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