A203号室

2005年10月13日
ついこのあいだまで住んでいたアパートのとり壊しが今日から始まった。出がけに作業車が入っているのが見え、会社の帰りに立ち寄ってみたら、がれきの山、畳の山ができていた。よく見ると全部が解体されたわけではなく、半分くらい、ちょうど私の部屋だったところぐらいまでがえぐりとられているのだ。それに気づいてはっとした。更地になっていたらまだよかったのに、私の部屋の壁(だったかもしれないところ)がさらされているかと思うと、それこそ自分の胸がえぐられるようにいたたまれない思いだった。せめて何かでおおってくれていたらよかったのに。私ひとりのためにそんなことしないだろうけど。暗くてはっきり見えなかったのは幸いか。

こうなるのは5月末からわかっていたことなのに、実際に目の当たりにするとショックだ。友人にこのことをメールすると、「寂しい思いしたね。とっても愛した部屋だからね」と返事をくれた。読んで大泣きしてしまった。そうなんだ。今の部屋は前の部屋に似てるし、悪いところもあるけど、前よりもいいところもある。でも違う。なんでかうまく説明できないけど、あの部屋は特別だった。似た間取りの物件は他にいくつもあったが、抜け感というか、ぱあっと開けた、それでいて居心地よく落ちつく感じはあの部屋にしかない。初めて見たときに「ここなら春夏秋冬、楽しく過ごせるだろう」と思い、その予感は当たった。南向きの、やや低めの位置についた大きな腰高窓がすごく気に入っていて、暖かいイメージとともに思い出される。

解体途中の現場に居合わせるなんて、お部屋のほうもさみしくてお別れを言いたかったかもしれないね、と友人は書いていた。最後の数ヶ月は、次の部屋を探さねばならなかったから、ちゃんと住んであげられなかった気がする。ごめんね。初めてのひとり暮らしを助けてくれてありがとう。大好きなお部屋に感謝を伝えてその場を立ち去った。

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