(ビョークじゃないよ)

とあるギャラリー・イベントで自分ひとりで作って踊る、ということを初めてしました。7時の開演に、3時頃から会場へ行って(自分としては不安要素が多かったので早めに入っていたかった)、ストレッチしたり場当たりしたり、夜までひとり裸足で建物内をぺたぺたと歩いていた。ざっと通しのリハをしてもなんだか雰囲気なじめなくて、結局、ここは個展の主であるアーティストの方の場で、私なんか全然、小物だよなと思い(それは本当。ダンスのプロでもないし実績もない)気持ちがのれなかった。こういうことで塞いでいてはいけないよな、でもめげてた。アーティストの方は会場にドリンクやスナック類を用意していらっしゃったのだが、ちゃんとした食器を使ったり、輸入食品だったりおしゃれなところもなぜか気落ちする。

夕方になって、前に別のイベントでご一緒したことのある、私よりも年上の女性パフォーマーの方がいらっしゃる。楽屋…がないので代わりの給湯室で、「こういうことするの初めてなんです」と活動歴の長い、まさに「百戦錬磨」の彼女に緊張しつつ打ち明けると、「それは素晴らしいじゃない。デビューは思い出に残るものよ」とどこかの馬の骨ですらない私に言ってくださった。大いにほっとする。実はムーブメントクラスの先生が彼女と「同窓」であることが先日わかったのだが、そんなことからも話に花が咲く。

20人ほどのお客様の前で、雰囲気に飲まれたし、間違いもいっぱいした。スタジオでもっとできたときもあったのに、と思うのが悔しい。でも、「すごくかっこよかった」と言ってくれる若い子がいて、他にも何人か声をかけてくれた。来てくれた友人に「こういうこと続けていいと思う?」と訊いたら「続けなさい」と言ってくれた。来れない友人たちが、“応援の気”メールや、気遣いのメールをくれたりした。本当にありがとう。

今回は本当に自信がなかった。ひとりで作って練習するのはつらくはなかったが、「人に見せるものとして成立できてるんだろうか?」わからなくてずっと不安だった。

すごくすごく嬉しかったのは、先の女性パフォーマーに「よかったよ。センスある」と言われたこと。胸のつかえがとれたというか、一気にほっとしたというか、それ以上。「初めてにしては立派。船出ですね。congratulations!」とも。(いや、そんな…ぼろぼろだったんですけど)。彼女が偶然にも私のささやかなデビューに居合わせてくださったことは、本当に幸運なことだった。

「音にぴったり合わせないで、コンマ何秒かずらす。そのほうが動きの魅力が増す」という貴重なアドバイスも頂く。ずらす…ってのは考えていたんだけど、0.X秒って単位なのか! 耳とカンを鋭くしないと。あと「あなたは下半身がちょっと自信がないのね」と(いや、頭から爪先まで自信ないです)

音がマスターで、動く人がサーバントになるばかりだとつまらないから、「はずす」ということを考えていたんだけど、「音に合わせた“振り”の部分を入れたほうが、観る人としては落ち着きがいいのでは」とも思って、合わせるところも入れていた。それにやはり「音に合わせる」ほうが楽なので、そっちへ流れてしまう(はずすほうが主体性が要る)。王道なダンスではまずやらないことだが、こういうやり方は音楽とのからみ方が多様になるので、まだ十分にできるだけのテクニックやセンスは自分にないけど、惹かれている。誰も振りをつけてくれなさそうな、でも好きな曲と関わるチャンスをつくる方法でもある。

選んだ曲はUlrich Schnauss "Molfsee" 、Portishead"Strangers"と、個展の音楽を担当している日本人アーティスト作のノイズ〜ピアノ曲(あわせて10分くらいに編集)。前2曲は11月に80回以上聴いていた。でもまだ聴くと思う。イベントは終わったんだけど…終わったような気がしてない。それに作品としてまだまだできあがってはいない。この2曲は好きで、われながらこの組合せはいいと思う。ただポーティスヘッドの曲は強くて、ひきずられないようにするのが大変でした(そこが面白いんだけど)。そして小道具は「トランク」でした。

1ヶ月、ずっとこればかり考えてエネルギーとられてて(そしてお金もかかって)、でも全部自分で決めたことだから負担ではなかった。その集中が、自分にとっては信仰のように生活を支えていた。うーん、充実していた。楽しかった。前に道があるような気がなんとなくする。船出するのでしょうか、遠くに行くのでしょうか。 別れ際に女性パフォーマーから、師匠へ伝言を預かった。

コメント

nophoto
yeelen
2006年12月3日6:40

デビューおめでとうございます。観客としてみることはできなかったけど、文面から、Suicaさんの内面の不安と、外に表出されていたものとの緊張感ある拮抗を想像しながら、じーんときてしまいました。
負担であることを感じずにできるぐらい、私も何ごとかに集中してみたいな・・・。
『アラベスク』って漫画で、自信がない人というのは、
そのゆえに求め続け、成長に際限がない、みたいなことがあって何だかそれを思い出しました。

Suica
Suica
2006年12月3日11:24

ありがとうございます〜。ぼろぼろだったんですけどねー。ひとりで作品をつくるというのは、想像していた以上にあれやこれやすることも考えなければならないこともあって、時間&エネルギー&お金が奪われていきましたが、それでも負担というよりは充実と感じられていたと思います。発表できたときは、ひさびさに呼吸ができたような感じでした。
『アラベスク』にそんなこと書いてあるんですね。自信満々にはなりえないだろうけど、自分で自分を支えていけるような自信を少しずつつけていけるといいなあ、です。

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