ブロードウェイ・ミュージカル「コーラスライン」の8ヶ月にわたるオーディションを追ったドキュメンタリー。「コーラスライン」自体がオーディションの話なので入れ子な感じではあります。

「レジュメに『踊れます』と書いてあったらすべて(踊らせて)見た」のだそうだ。19の役に対して3000人が集まったという(ただしまんべんなくどの役も見せているわけではないので、物語性があるものを選んだのかもしれない)。第一次審査は「ダブルピルエットでテクニックとスタイルを見る」、冒頭のオーディションシーンでのダイナミックなユニゾンを、すんごく小さい部屋で振り写ししているのに驚く。意外だったのは初期の審査ではそれほどテクニックが粒揃いでもないこと(…って私が言うのもなんですが)。

実は観ていてはっとするほど上手い、という人はそんなにいない(オーディションなので踊りこんでいない、映像なのでどうしても弱くなるせいもあるだろうが)。何が訴えるかというと、やっぱりそのauditionee(オーディションを受けている人)のこちらへ向かってくるエネルギーだと思った。競争の激しいブロードウェイはテクニック至上主義だと思っていたので、これも改めて気づかされそれこそはっとしたことだった。最終近くまで残る人たちは、テクニックではさほど巧拙ないのだろうが、最終的に決まる人たちはその役に合うものがあると感じさせる何かがあるし、観客が自然と「ひきつけられてしまう」ような魅力を含めてエネルギーがあると思う。ブロードウェイにおいても、テクニック(だけ)ではなく、エネルギーが大事と感じたことは私には収穫だった。

マイク役で最終に残った男性はすごく上手で「見せる」と思ったのだが、落ちてしまう。スタッフが「彼はやり過ぎた」と言うのと、本人の弁を聞いてなんだか納得した。彼はちょっと気が多いというか、その役に執着がない。自分の見せ場はおさえてもアンサンブルのキャストとしてはどうなの、って感じは確かにする。オーディションってそういうところまでばれてしまう。

カンパニーに所属するのでなく、こうしてオーディションで役を得ていくダンサーたち。たとえオーディションに受かったとしても、何かを確実に約束されたわけではない。なんかレベルの違う世界で引き寄せるのも恐縮ではありますが、「この一瞬に賭けるしかないんだよな」という思いを新たにします。荒涼としてるんだけど、すがすがしい…みたいな、そんな感じ。

良かったです。私はもう一度観たい。

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