※ねたばれあります。

監督(平野勝之)による自身と女優(林由美香)の記録。

きれいで、かわいい人。もてそう(もててる)。女優さんだしね。奔放で、身の守りかたを知らない。この人は、私がかつて知ってた子たちに似ている、と思った。そのなかには死んでしまった人たちもいるし、生き残った人たちもいる。私はそういう子たちがいつも羨ましくて、死に損なったまま、これを観ている。

監督は女優が自死(あるいは事故死)した場に居合わせ、カメラを回していた。観ながら、私は当惑してた。これは作品というより、死んでしまった人と残された人々の人生そのものでは。これって、つくり手が自分のためにやらざるを得なくてやっていることだよね。監督が「(制作に)乗り気でない」と言うのもよくわかる。よくわかるけど、こんなど渦中で、どこへ連れてかれるの?と困っていた。

2人が恋人関係にあったとき出かけた、利尻島までの長い自転車旅行のさなかでも、彼女がいつもきれいに化粧をしていたのが、なんだか象徴的だった。「撮っていいよ」と言いながら、本当は誰にも見せてないんじゃないかって。

「彼女が自分について離れない、と思っていたけれど、張りついていたのは自分だった」と監督が終盤で独白する。いちばん彼女に近づいた気がした。

「逝っちまえ!」と男は叫ぶ。

ラスト、監督が泣きながら、彼女が死んで5年もたってからやっと泣いて、自転車を豪速でこぎながら夜道で叫ぶ。自分なりの弔いをしなければと。この瞬間、「作品になった」と私は思い、はっとした。見事だった。

あまたある「喪失と再生のものがたり」は私にはぬるいのばっかだが、これにはやられた。つくり手が相当、痛い思いをしている。つくられるべきして、つくられた。これほどうそのないものって、そうそうないと思う。そのもの、それだけ。

どんなフォームでも切実さのある作品は迫力がある。重いし、ファンシーなものはないけれど、こういうのが私にとっては真に糧となる作品です。なんか凄いものを観た、というか体験した。

コメント

権之助
2012年2月4日2:02

私の感想よりもずっと作品の本質をズバッと捉えていらっしゃる……

勉強になります。

Suica
2012年2月4日21:00

ありがとうございます~。実は調べたらこの日で終演だったんですっ飛んでいきました。

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